一文字作品「世」 タテ70cm ✕ ヨコ136cm
今回の渋谷ヒカリエ展に出品した作品について解説します!
これは「世」という字を書いています。(書体は行書)
実は
いま私が属している書の研究会では
一文字の漢字をどう見せたら
古臭い昭和の書道(言っちゃった!)じゃない作品になるか と
いうのを探求しており、だったらタテ線とヨコ線しかないシンプルな
字をできる限り造形化してアートにしてしまえ! ということで
漢字をアートのオブジェにしたらどうなるか? という
実験&実証を繰り返して
この作品に至りました。
なお実験ですから、何パターンも作っては考察します。
ヨコ2本、タテ3本 たった5本の線ですがどれを短く、どれを長く、どれを右下がり、どれを並行に・・・ と
考えていくと、5本の線の組み合わせはめちゃくちゃあることに気がつきます。
この時点では書道というよりは数学ですね(笑)
で、その組み合わせから良さげなものをピックアップし、以下ステップを踏みます。
① まずは半紙サイズでデッサン (全体造形のバランスを見る)
② 本番の縮尺1/2に書いてみる (余白や空間、どこに書くかレイアウトを決める)
③ 本番サイズに書く (書く速さ、墨の量など微調整を重ねる)
作品展でよくある質問に、
「これって何枚くらい書くんですか?」と聞かれるのですが
今回においては 150枚です! 紙代だけでン万円・・・(泣)
ちなみに独特の墨のにじみを出すために、墨は自分で作ります。
煤をこねるので指も爪も鼻の穴までススで真っ黒くなります。
(粒子が細かすぎてマスクをしても無意味です)
この時ばかりは墨職人さんを心の底から尊敬します・・・
それで150枚の中から、最もヨコ線に重厚感があるこの作品を選びました。
わたしは篆刻もやるので8cm四方の青田石に雅号をデザインし、彫って、ハンコを押して完成です。
あえてアルファベット印にしてみましたよ!